【連載第6回】
今回はアトリビューションモデル (attribution model) について解説します。コンバージョンの発生(結果)が、どのクリックされたキーワード(要因)によるものなのかを関連づける仕組みです。アトリビューションモデルの選択によって、コンバージョン率の改善も期待できます。
アトリビューションモデルとは
見込顧客は商品の購入などのコンバージョンに到達するまでに、検索を複数回は行って認知や吟味をして、さまざまな複数の広告を見るのが多いです。つまり、広告主のウェブサイトと複数回の接点を持ちます。コンバージョンに到達するまでの複数のクリックに対して、貢献度に応じた評価を行う枠組みをアトリビューションモデルと呼びます。このブログでは、アトリビューションモデルの基礎と各モデルについてご説明します。
そもそも、なぜアトリビューションモデルが重要なのか、以下の例を参考に考えてみましょう。
例: A さんは最近、新しいランニングシューズを購入しました。初めは異なるブランドのシューズを購入しようとしていましたが、検索をしている中で偶然訪問したブログで、バナー広告が目に入りました。これが実際に購入した商品を知ったきっかけでした (認知、ファーストコンタクト)。最終的にはその商品名を検索して購入に到りました。もし A さんが最初にバナー広告を見なければ、当該商品を購入対象として比較検討することもありませんでした。したがって、購入のコンバージョン(やコンバージョン値、売上)の貢献度として、最終的に見た広告はもちろんのこと、A さんのきっかけとなった最初に見た広告の貢献度も無視できません。
Google 広告のデフォルトの設定では、コンバージョンは「ラストクリック」モデルに基づいて成果を評価します。先ほどの例で言うと、最後の検索に対する成果のみを評価することになり、商品を知る要因となったバナー広告など、ラストクリック以前のクリックは、コンバージョンの貢献として考慮されないことになります。このように、ユーザーが最後にクリックした広告だけを評価する視点しか持っていないと、コンバージョンに繋がりやすい(ユーザーが最後にクリックした)広告費用のみを増やし、コンバージョンに繋がりづらい広告費用を下げるのが得策だと考えるかもしれません。しかし、それにより商品を知ってもらうきっかけとして貢献していた広告は評価されず、結果的に成果が頭打ちになる可能性もあります。適切にコンバージョンに至るまでの各広告やキーワードを評価し、管理するためにアトリビューションモデルを選択するのは広告費用対効果 (ROAS) を最適化する上でも必要です。
アトリビューションモデルの種類
Google 広告で利用可能なアトリビューションモデルは以下のとおりです。
アトリビューションモデルには、さまざまな種類があり、コンバージョンに到るまでの各広告やキーワードにどれほどの貢献度を割り当てるかによって選択できます。コンバージョンアクションに毎に、最適なアトリビューションモデルを選ぶのが理想的です。

データドリブンモデル (DDA) を利用するには、コンバージョンデータが充分にあるアカウントが必要になり、過去30日間の検索キャンペーンで15,000回のクリックおよび600件以上のコンバージョンがあるのが基準です。実際のところ比較的中〜大規模のアカウントが必要になるので敷居が高めです。
したがってまずアトリビューションモデルを選ぶ候補としては、ルールベースである次の中から選びます。
- ファーストクリックモデル (First Click Model)
- 線状モデル (Linear Model)
- 減衰モデル (Time Decay Model)
- 接点ベースモデル (Position Based Model)
- ラストクリックモデル (Last Click Model、デフォルトのモデル)
以下、例と共に各モデルを説明します。
例: あなたが東京の某所で「日本リゾートホテル」というホテルを経営しているとします。ある見込客が、「東京 ホテル リゾート」、「プール付き 東京 ホテル」、「日本リゾートホテル 東京」、「日本リゾートホテル 予約」の順に検索を行い、最後の検索で表示された広告をクリックしてサイトにアクセスし、ホテルを予約したとします。
ラストクリックモデル
コンバージョン経路で最後にクリックされた広告とそれに対応するキーワードだけに貢献度を割り当てます。この場合、ラストクリック アトリビューションモデルでは、最後のキーワード「日本リゾートホテル 予約」だけにコンバージョンへの貢献度が割り当てられます。

ファースト クリックモデル
コンバージョン経路で最初にクリックされた広告とそれに対応するキーワードだけに貢献度を割り当てます。ファースト クリック アトリビューション モデルでは、最初のキーワード「東京 ホテル リゾート」だけにコンバージョンへの貢献度が割り当てられます。

線形モデル
コンバージョン経路で発生したすべてのクリックに貢献度を均等に割り当てます。線形アトリビューション モデルでは、コンバージョンへの貢献度がそれぞれのキーワードに均等に( 以下例では、100% ÷ 4 回 = 25 % ずつ)割り当てられます。

減衰モデル
コンバージョンまでの時間が短いクリックに、より多くの貢献度を割り当てます。減衰アトリビューション モデルでは、コンバージョンまでの時間が最も短かったキーワード「日本リゾートホテル 予約」に最も多くの貢献度が割り当てられ、最初にクリックされた広告のキーワード「東京 ホテル リゾート」には最も少ない貢献度が割り当てられます。

接点ベースモデル
コンバージョン経路の最初と最後にクリックされた両方の広告とそれに対応するキーワードにそれぞれ 40 % の貢献度を割り当て、それ以外でクリックされた広告とそれに対応するキーワードに残りの 20 % を均等に割り当てます。つまり、「東京 ホテル リゾート」と「日本リゾートホテル 予約」のそれぞれに貢献度が 40 % 割り当てられ、残りの「プール付き 東京 ホテル」、「日本リゾートホテル 東京」には貢献度がそれぞれ 20% ÷ 2 = 10 % が割り当てられます。

データドリブンモデル
このコンバージョン アクションの過去のデータに基づいてコンバージョンの貢献度を割り当てます(十分なデータが蓄積されたアカウントのみ利用可能)。「データドリブン」では、コンバージョンに導いた貢献度に応じて各キーワードに貢献度が割り当てられます。

アトリビューションモデルを選択するメリット
また、アトリビューションモデルには、以下のメリットがあります。
- 販売サイクルの上流にいる見込客にアプローチする: コンバージョン経路の上流(認知段階など)で見込客に働きかけることができます。
- ビジネス目標に合わせる: 見込客が広告主の商品やサービスを検索する方法に合ったモデルを使用できます。
- 入札戦略を改善する: 広告の成果をよりよく把握したうえで入札単価を最適化できます。
アトリビューションモデルを最適に選ぶことで、顧客が購入等に到るまでのさまざまなタッチポイントをより的確に評価し、効果が高いポイントに投資を集中できるようになります。具体的には、検索広告のアトリビューションの手法をラストクリック以外のモデルに切り替えることで、同水準のコンバージョン単価を維持しつつ、数%程度コンバージョン率が改善されることもあります。
Google 広告の管理画面から、アトリビューションモデルを変更するとどのようにコンバージョン数、コンバージョン単価、コンバージョン値などが変化するかシミュレーションできます。下管理画面上部にある [ツールと設定] → [測定] → [アトリビューション] と進みます。

アトリビューションモデルの比較の他にも、どのキャンペーン、広告グループがコンバージョンに貢献したかなど経路についてなど様々に比較分析できます。

ここではモデル比較を選びます。画面右上のモデルを選び、例えば「ラストクリック」と「線形」でコンバージョン数、コンバージョン単価が何%変わるかを一眼で見比べることができます。

また、キャンペーン別、キーワード別、広告グループ別や、コンバージョンアクション別など様々なセグメントで比較検討できます。もしデフォルト設定のラストクリックモデルだけを利用している場合は、ぜひモデル比較機能をお試しください。
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